官能の哲学
毎日使うものだからこそ、肌になじむ心地よさ、使い心地、効果感、そして香りといった“官能”に響くものづくりを徹底してきたKOSÉ。そのため開発者は入社するとまず、「みずみずしいとは何か」「どの質感が最も心地よいのか」「どの香りがブランドらしいのか」といった感性を論理的に整理し、ものづくりに落とし込む姿勢を学んでいきます。先端科学と官能的な使用感、この二軸こそが、KOSÉの開発の核です。なかでも今回特筆すべきは、独自の香りづくり。新たに解釈された香りは、単なる心地よさを超え、心の状態にまで静かに作用する。 KOSÉが長年培ってきた官能哲学の延長線上にある、新たな香りの価値を紐解きます。
香り研究の歴史と現代における香りの価値
香水のKOSÉ 。創業者・小林孝三郎が「良い商品こそ企業の命、香りは化粧品の華」と語ったように、KOSÉは創業時から香りを大切に育んできました。自社に香料部門を構え、柱となる製品の香りはトップ自らが品質を確かめる。その徹底した姿勢が、香りを単なる付加価値ではなく、ブランドの本質へと昇華させてきたのです。その精神は今、さらに進化しています。ストレスが日常化する現代において、香りはどんな価値をもたらせるのか。気持ちに寄り添う存在であるからこそ、KOSÉでは研究的な視点から、香りの機能性と情緒的価値の両立をより深く追求しています。
肌・からだ・心に響く香りの研究と、その想い
心理的ストレスは、肌のバリア機能を弱めたり、治癒を遅らせたりすることが、多くの研究で明らかになっています。だからこそ、気分や心に働きかける香りは、ストレスをやわらげ、結果として肌環境を整える手がかりになり得るはず……。さまざまな刺激や情報があふれる今、自分に意識を向ける時間はますます大切です。肌・からだ・心はたしかにつながり合い、香りはその結び目にそっと触れるように、“自分と向き合うスイッチ”になる。香りを通して心とからだの調和へと導く、そんな研究の原点をここに見出しました。
自律神経に働きかける香りが、肌や心にもたらす効果とメカニズム
私たちが着目したのは、香りが自律神経へ働きかけるアプローチです。自律神経は、体を活動モードへ導く交感神経と、休息モードへ導く副交感神経の均衡で成り立ち、そのバランスが乱れると、血行・呼吸・消化・睡眠・ホルモンバランス、そして肌にまで影響が広がります。まさに、心身のリズムを司る要といえる存在。心身のバランスや調和を重んじる「東洋思想」に着想を得た回の研究では、この二つの働きに深くフォーカスしました。ただ副交感神経に働き鎮める、ただ交感神経に働き覚醒させる、という一方向のアプローチではありません。その時々の心とからだの揺らぎに寄り添い、乱れた自律神経のバランスを最適へと導く。そんな“調和”をめざした香りの研究を行っています。
自律神経に働きかける2種類の精油とは?
Breath in balance深く落ち着いた呼吸へと導く香り。 辿り着いたのは、「交感神経の活動を抑える精油」と「交感神経の活動を高める精油」という、自律神経の二つの働きに寄り添う精油でした。一般的に、交感神経を抑えて副交感神経が優位になると、体はゆるみ、眠気が訪れ、手先があたたかくなる。赤ちゃんを抱いたときの、あの“ぽかぽか”を思い出すかもしれません。一方で交感神経が優位になると、意識が冴え、集中しやすくなり、発汗とともに手足がひんやりとする。こうした末梢皮膚温の変化を指標に、香りが自律神経に与える影響を測定。そこから導き出したのは、リラックスとリフレッシュ、それぞれに働きかける二つの精油を組み合わせた、深い呼吸へと誘う香りなのです。
肌・からだ・心に響く香りの開発プロセス
肌・からだ・心へ香りがどのように響くのか。その計測は、香りの刺激が目に見えず、ごく小さな変化であるがゆえに、決して容易ではありません。そこで私たちは、脳表面の血流量の変化を捉える装置を用いるなど、さまざまな研究を重ねながら、香りがもたらすわずかな反応を丁寧に追っています。また、天然精油は採取する時期や環境によって香りが微細に揺らぐため、香り全体の印象がぶれないよう、調合の設計や原料の採用基準において管理を徹底。 さらに、天然精油の香りをしっかりと立たせながら、化粧品としてのまろやかな心地よさを保つために他の香料と調和させる作業は、まさに私たちが長年培ってきた官能へのこだわりと知見が息づく領域です。
使うほどに手放せなくなる、唯一無二の香りの理由
ヨーロッパをはじめとするアロマセラピーの世界では、精油は長い歴史の中で治療にも用いられてきました。私たちはその知恵に学び、ポジティブな気持ちを高めるために、覚醒感をもたらす精油と、鎮静感をもたらす精油の二つを組み合わせ、心身のバランスに働きかける香りを目指しました。香りによるホリスティックな効果が期待できるうえに、天然精油ならではの奥行きと立体感が息づく。その唯一無二の香りこそが、使うほどに心を深く惹きつける理由であり、私たちがこだわり抜いた部分なのです。








